はじめに

まだSNSが今ほど市民権を得ていない2010年頃、当講座を主宰している田村は企業のSNS運用サポートを始めました。当初は従来のウェブサイトとは別の “何か” が登場したと、それも “ほとんど費用はかけず” “将来多くのユーザーが利用する可能性があり” “自社の商品やサービスをPRできる” ツールであると、まるでマーケティングにおける魔法の杖が現れたような騒ぎでした。そのような先入観を改め、クライアントにSNSの本質を理解していただくのに苦労したことを覚えています。

当時は企業のPR活動をサポートするはずの広告代理店もSNSについての本質的な理解度は乏しく(これは現在でも一部の広告代理店に見られる傾向ですが)、「SNSを活用した際のCTRはウェブサイトよりも良いのか?」「SNSで告知するとウェブサイトよりCVRは高いと聞いたのですが、その手法をクライアントに伝えてほしい」など、SNSの本質とはほど遠い無理難題を毎日のように押し付けられたものです。

時は流れ、いまや日本国内でのTwitterユーザーは4,500万人を超えました。そしてInstagramは3,300万人、Facebookも2,600万人というユーザーを抱えています。ウェブサイト制作やリニューアルの打ち合わせをしていてもSNSとの連携が必ず話題になります。申し上げるまでもなく、企業のPR活動においてSNSを外すことはもはや考えられない時代になったのです。

私がSNSのサポートを開始した頃と比較すると、新規にSNSの運用を開始するというクライアントは明らかに減少しています。どのクライアントも Twitter / Instagram / Facebook のいずれかのアカウントを(アカウント運用の頻度はさまざまですが)保有しているというケースが大多数です。

しかし、アカウントを保有している企業が適切にSNSを扱えているかというと、そうではないケースが散見されます。とにかくフォロワーを増やしたい、バズ(自社アカウントの投稿が大量のユーザーによって拡散される状態のこと)を起こしたいなど、SNSの運用そのものが「手段」ではなく「目的」になってしまっているケースをしょっちゅう目の当たりにします。挙げ句の果てには社内でその効果が認められず、運用をストップしたまま放置されてしまっている休眠状態のアカウントが大量に発生しているという事態にも陥っています。

SNSを運用することそのものは目的ではないはずです。何らかの成果を求めて目標を設定し運用を開始し、目標に対しての進捗を確認しながら必要であれば軌道修正し、目標達成のために日々運用するものであるはずです。

直接クライアントより依頼があった場合には、目標の設定に関わる考え方や、設定した目標に対するKPI設定、定めた目標を社内に違和感なく共有する表現などを一緒に考えながら進めることができます。しかし、私が日本のすべての企業にSNS運用の本質を伝えることは到底できません。

SNSをすでに利用している、もしくは利用しようとしているすべての企業から “知らないことによる不利益” を抹殺したい。しかし、自分ひとりの力では不可能、何か良い手段がないかと日々考えながら目の前のクライアントと接していました。

企業のSNS運用担当者自身でこのような問題を解決できれば、日本のSNS活用はさらに進化するのではないか。

企業が代理店などにSNS運用のサポートを依頼する際にも、企業側がSNSの本質を理解していれば、目的に応じた適切な運用が促進されるのではないか。それを伝える術があるのではないか。

そう考え作成したのが当マニュアルであり、当講座です。当講座を受講されることによって、設定された目的に向かって皆様の企業にて正しくSNSが運用されるようになれば、講座作成に携わったメンバーとしてこれ以上の喜びはありません。

2020年4月 田村 憲孝

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